Koji Yamanaka

私は仕事柄だけでなく、自動車好きという嗜好もあってか毎月発表される自動車販売実績の統計発表を見るのが好きです。

 

勢いのあるブランド、落ちしまった車種などの推移を見て、その要因や背景を推論するのがとても楽しく感じられます。

 

例えば輸入車業界でいえば、「今年ついにフォルクスワーゲンの連続一位が途切れてしまうのか?」といった表面的な話題だけでなく、「それだけの販売台数を支えるメルセデスベンツの販売体制の強化はどのように築かれたのだろう?」なんてことを考えたりします。

 

さて、こうした統計と切って切れないのが、「シェア」と呼ばれる市場占有率です。

 

市場シェアというは数ある指標のうちの1つでしかありませんが、無視することのできない非常に重要な指標と言われています。

 

シェアはその企業やブランドの市場におけるポジションを明確にしてくれます。すなわち、市場に対する影響力を測ることができます。そして、シェアの推移は市場の将来像を導いてくれます。

 

つまり、日々競争が行われいる市場においてシェアを正しく知ることは、その企業やブランドが採るべき戦略を決める上で非常に重要な示唆を与えてくれるのです。

 

(より正確を期すならば、市場の大きさと成長性についても同時に知る必要があります)

 

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さて、ではシェアというのはとにかく大きな数字であればそれでいいのでしょうか。

 

2015年1-6月の輸入車販売台数ランキングを見てみましょう。

 

 

ついにフォルクスワーゲンを抑えて上半期一位を獲得したメルセデスベンツの、「輸入車市場」におけるシェアは22.7%です。さらにBMWまでの上位3ブランドのシェアは59%、BMW MINIまでを含むドイツ系5ブランドの同シェアは、実に77.1%にもなります。

 

これらの数字になにか意味を持たせることができるでしょうか?

 

ここで登場するのが、アメリカの数学者、B.O.クープマンによって導き出された市場シェア理論です。

 

これによると、シェアには6つの意味のある目標値が存在するそうです。
 

 

  • 独占的市場シェア:73.9%
     「独占的寡占型」と呼ばれ、首位が絶対安全かつ優位独占の状態となる
     
  • 安定的トップシェア:41.7%
     実質的に3社以上の争いの場合、41.7%以上のシェアを取れば業界における強者となり、安定した地位を確保できる
     
  • 市場影響シェア:26.1% 
     この値を上回ると、激戦の競争状況から一歩抜け出した状態となる。市場における優劣を決める境界線。少数による寡占状態ではない市場では、一般にはこのレベルが業界トップであることが多く、シェア2位であったとしても、市場に影響力をもつことが可能となる
     
  • 並列的競争シェア:19.3%
     複数企業で拮抗している競争状態の時に多いシェアで、安定的トップの地位をどの企業も得られていない状況。この場合は、市場影響シェアである26.1%を獲得することが各企業の目標となる
     
  • 市場認知シェア:10.9%
     生活者において純粋想起がなされるレベルのシェア。そのブランドや商品に対する認知がその市場で認められたともいえる
     
  • 市場存在シェア:6.8%
     生活者において、助成想起が可能なレベルです。市場において、かろうじて存在が許されるレベル
     

 

さて、改めて先ほどのランキングを見てみましょう。

 

メルセデスベンツとフォルクスワーゲンは、現在市場影響シェアと並列的競争シェアの間にいます。多くのブランドが競合する輸入車市場において、この数値はまだ安定的なトップとは言えないと分析されます。

 

両ブランドの今後採るべき目標は、26.1%を如何にして獲得するのか?という点になるでしょう。

 

一方で上位3ブランドのシェアは、安定的トップシェアを獲得しています。彼らは単独では市場影響シェアの獲得を目指して激しい競争状態にはありますが、4位以下のブランド群に対してはすでに強者のポジションを獲得しており、下位のブランド群に対抗することに力を注ぐ必要はあまり無い、と診ることもできます。

 

さらにドイツ系上位5ブランドのシェアは独占的市場シェアにまで到達します。この状態を崩すことは、よっぽどのパラダイムシフトや市場の混乱でも起きないかぎり、覆すことは難しい、と言えます。

 

こうしてクープマンの理論に当てはめてみると、上位のドイツブランドと、下位のイタリアやフランス、アメリカのブランドが採るべき目標や戦略は自ずとことなるものになる、というのも頷けるのではないでしょうか。

 

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と、ここで終わってしまうかといえばさに非ず。もう少し俯瞰する位置に視点を動かしてみましょう。

 

そう、輸入車はそれだけで完結する市場ではありません。日本では国産車とも競合しています。

 

 

輸入車が日本の新車市場におけるシェアは、なんとたったの6.4%。商用車を含めた場合は5.4%。軽を除いても10%ほどの数値にしかなりません。

 

これはクープマンの理論に当てはめると、ようやく市場に認知されるか、ギリギリ存在が許される程度のものでしかない、と言えます。

 

輸入車の各ブランドは、「輸入車市場」という非常に小さい枠の中で自身の立ち位置を見極め、目標を決めるだけでなく、「日本の新車市場」の中でも同様の戦略を立てていかなくてはなりません。

 

フォルクスワーゲンが軽自動車よりも価格の安い「up!」を販売したり、メルセデスベンツが低価格の「Aクラス」を販売したり、BMWがFFのミニバンの「グランツアラー」を販売する。

 

シェアのお話を知る前と知った後でこうしたトピックに触れると、インポーターの思惑や苦悩の一部が少し見えてくる気がしませんか?

 

数字から始まる推理ゲーム。面白いでしょ?

 

Koji Yamanaka

 

 
 
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