2017.11.09 
Koji Yamanaka

自動車が好きな方、業界に関わっている方が毎月楽しみに?している自動車販売ランキング(新車)。

 

一つは自動車販売会社(ディーラー)の全国組織である、一般社団法人 日本自動車販売協会連合会、通称「自販連」が発表している「乗用車ブランド通称名別順位」

 

もう一つは自販連の軽自動車版である、一般社団法人 全国軽自動車協会連合会、通称「全軽自協」が発表している「軽四輪車 通称名別新車販売速報」

 

そして輸入車版ともいえる、日本自動車輸入組合、通称「JAIA(ジャイア)」が発表している輸入車新車登録台数速報

 

以上3つを半ば習慣的に見ている方もいらっしゃるかもしれません。

 

これらランキングは車種毎の売れ行きを見る重要な指標ですが、台数の多いクルマ=人気の高いクルマ、とは一概に言えないところがあると私は考えています。

 

例えばこちらの表は2017年10月の自販連発表の販売台数ランキングです。(クリックすると拡大表示します)

 

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工場での検査工程での不正が発覚し、出荷や登録を停止した日産自動車の人気モデルが順位を大きく落としたことがニュースになりました。実際、上位の常連だったコンパクトカー「ノート」は下位に沈み、ミニバン「セレナ」やSUV「エクストレイル」はランキング外へと弾き飛ばされています。

 

ここで私が注目したのは、3位に躍り出ているトヨタの1Boxミニバン「ヴォクシー」です。

 

このクラスは長らく日産「セレナ」、トヨタ「ノア」「ヴォクシー」「エスクァイア」、ホンダ「ステップワゴン」が激しく競争し、最近では同一車線での自動運転サポート機能を謳う日産「セレナ」がトップを占めていました。

 

「セレナ」の購入層が流れたというだけなら、直前のマイナーチェンジでハイブリッドをラインナップに加えて競争力を大きく向上させたホンダ「ステップワゴン」や、同じくマイナーチェンジしたトヨタの各モデルも大きく台数を伸ばしていいはずですが、実際には「ヴォクシー」の順位が突出しています。これはどうしてなのでしょう?

 

ポイントは「トヨタの多チャンネル販売」「ホンダN-BOXのバカ売れ」にあるのでは、と私は推測し、それを裏付けるデータを探してみることにしました。

 

上記表には、トヨタのみ販売チャネルを追加してあります。上位2台は全チャネルで販売して月販1万台超え。前年比ではどちらもマイナスですが、トヨタの販売力の底堅さを実感させる結果です。

 

一方、トヨタ「ヴォクシー」はネッツ店のみの扱い。それでこの台数というのはちょっとびっくりします。

 

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こちらのグラフは、各モデルを売っている店舗数(2017/11/7時点。各メーカー公式サイトから集計)と、一店舗あたりの販売台数を元にランキングを組み替えたものです。

 

スバル、マツダ、スズキは調査時間が足りなかった(=かなり面倒だったので諦めた)ので、今回はランキングから除外していますが、実際、スズキやスバルはサブディーラーと呼ばれる販売委託店が多く、トヨタとの比較にはなじまないと判断しました。

 

さて、興味深いランキングになりました。

 

1位は大衆車を主に扱うカローラ店の「カローラ」「ノア」と、比較的若い顧客層をターゲットにしたネッツ店の「ヴォクシー」「ヴィッツ」、高級車と大衆車の中間をターゲットにしているトヨペット店の「ハリアー」、そしてホンダの「フリード」「フィット」と、他のチャネルと競合しないモデルが上位7位までを占めました。

 

一般的に複数のチャネルで扱うクルマはお客さんも競合を煽り、少しでも有利な条件でクルマを買おうとします。

 

販売店側から見ると、そうしたクルマは正直「売りにくい」。となれば、セールスマンとしては自チャネルでしか売っていないクルマの方が売りやすく、自然とそうしたクルマのお客さんへの販売に力が入るのかもしれません。

 

トヨタの人気車種「アクア」「プリウス」「シエンタ」といったモデルは、確かに総販売台数は多いのですが、トヨタ系4チャネル全てで買えるということで、販売店1店舗あたりの販売台数はそれほどでもない、というのがよくわかります。

 

それにしても、かつてのランキングでは1位の常連だったトヨタ「カローラ」もすっかり凋落したと言われていましたが、こうして一ヶ月に一店舗平均4.5台も売れているわけで、その実力は全く衰えていないことに驚かされました。

 

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お次の表は、各チャネル内での販売台数順位を追加したものです。(トヨタ系のみ)

 

複数のチャネルで販売しているモデルは、乱暴ですが販売店舗数で販売台数を按分させていただきました。実際の数値とはもちろん異なりますが、目安程度にはなるかと思います。

 

この表は、各チャネルがどの車種の販売に力を入れているかがわかります。上位3車種は以下の通り。

 

・トヨタ店:

小型ミニバン「ルーミー」、SUV「ランドクルーザー」、コンパクト「アクア」

・トヨペット店:

SUV「ハリアー」、大型ミニバン「アルファード」、小型ミニバン「タンク」

・カローラ店:

小型セダン&ワゴン「カローラ」、中型ミニバン「ノア」、小型ミニバン「ルーミー」

・ヴィッツ店:

中型ミニバン「ヴォクシー」、コンパクト「ヴィッツ」、小型ミニバン「タンク」

 

いかがでしょうか。各チャネルとも、売りやすい「専売モデル」と、実は隠れた大ヒットジャンル「小型ミニバン」が上位に並びました。

 

普通のランキング紹介ニュースでは、「アクア」「プリウス」といったトップの常連モデルのことしか触れませんが、こうして販売チャネル毎に分解してみると、本当の人気モデルが透けて見えてくるような気がします。

 

また、どんなに人気があっても、最終的にクルマを販売する営業マンやディーラーの数と販売戦略が販売台数に大きく影響することがわかるのではないでしょうか。

 

最初に提示した二つのポイント、「トヨタの多チャンネル販売」「ホンダN-BOXのバカ売れ」。

 

ネッツ店は自らが扱う車種の中で最も売りやすい&売りたいクルマとして「ヴォクシー」に力を入れ、ホンダはその販売力の多くを、フルモデルチェンジで大人気となった軽自動車「N-BOX」に割かれてしまったのではないか、と考えた次第です。

 

さて、最後に販売チャネル別の販売台数ランキングも作ってみましたのでご紹介しましょう。

 

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引き続き台数は単純に店舗数で按分した数字なので、実態とは異なることにご注意ください。

 

巨大なトヨタは各チャネル一つが他の自動車メーカー一社に相当すると言われています。(さらに自動車販売会社一つが輸入車インポーター一社分を軽く超えます)

 

各チャネルを自動車メーカーに置き換えてこのランキングを見てみるのも、また一興ではないでしょうか。

 

そして、先ごろトヨタが発表した国内販売車種削減の動き。自動車販売台数ランキング好きとしては、今後も当分目が離せそうにありません。

Koji.Yamanaka

 
 
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