輸入車戦国時代

2014年7月23日 公開 自動車業界トピックス 
すでにオーナーの方にとっては、輸入車ディーラーというのは当たり前の場所かもしれません。しかし、大多数を占める国産車オーナーにとって、輸入車とはなんとなく敷居の高い、近寄りがたい場所ではないでしょうか。   衣料、飲食、家具など多くの海外ブランドがどんどん身近になっている現代でも、こと輸入車に限っては・・・   インポーターも似た危機感を持っているのかもしれません。如何にブランド価値を維持・高めたまま、より深く強く日本市場にコミットすべきか。その取り組みの一つが、体感型施設の設置ではないでしょうか。   BMW_02-300x180 「BMWグループ・モビリティ・センター(仮称)」を東京都臨海副都心に設立」   audi_toranomon_002 「虎ノ門ヒルズそばに誕生したアウディのインタラクティブ発信基地」   gallery_02 「メルセデスベンツ コネクション」   アウディ、メルセデスベンツは都心の高付加価値ゾーンに進出し、明らかに高所得者層を狙ったマーケティング戦略です。   一方、BMW(とMINI)はより広い顧客層を想定し、お台場へと進出することを決めました。   お台場といえばトヨタがすでにメガウェブを展開し、国内だけでなく海外からの観光客も誘引し、ブランドイメージの向上に活用しています。   スポーツカーの共同開発で合意した両社が同じエリアで似たようなブランディングを図る、というのもなかなか興味深いですね。  
  輸入車市場は高い成長を続けているとはいえ、国内マーケットシェアはわずかに8.6%(2013年、軽自動車除く、JAIA調べ)に過ぎません。   さらに販売台数を増やすには、  ・車種バリエーションを増やし、より広い顧客層にアプローチする  ・販売店を増やす  ・ブランドに対する認知、親近感のすそ野を広げる といった施策を強力に推し進めていく必要があると思われます。   本来、成熟した自動車市場においては、2~3割は最低でも輸入車が占めるものだと言われています。となれば、日本市場ではまだまだ潜在的にシェアを伸ばすことが可能なはず。   販売好調なドイツ勢は、豊富な資金力でさらなるシェア拡大を狙った取り組みを増やしてきそうです。   一方、フランスやイギリス、ドイツ、スウェーデンといった、資金力に劣るブランドは如何にしてこの戦いに挑めばいいのか。   たとえるなら、今回ご紹介した施設はいわば「ディズニーランド」のようなもの。しかし、全ての人たちがディズニーランドだけに毎月毎月行くことはありません。   確かに熱心なファンやリピーター獲得という強みがディズニーランドにはありませんが、言い換えればそういった人たち無しでは、巨大な施設は維持し続けることすら困難なものとなります。   もっと気軽に、手軽に、お金もかけずにそこそこの楽しみを得られる体験とはいったいどういうものなのか・・・。   その辺りに、非ドイツブランドの戦略戦術が見いだせるのではないかと考えています。  

Koji Yamanaka

続・6月の新車販売実績

2014年7月7日 公開 自動車業界トピックス 
消費税UPの影響をモロに受けている輸入車新車販売に対し、相変わらず好調なのが軽自動車です。   『2014年上半期の販売首位は・・・(CarWatch)』 http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140707_656602.html   乗用車では相変わらずハイブリッド、コンパクト、ミニバンが上位を占めています。ただし、日産セレナがランク外に落ちたり、世界的に人気のコンパクトSUV、ホンダのヴェゼルがランクインするなど、いくつか目立つ動きもありますね。   さて、今回本ブログで指摘したいのは軽自動車のランキングです。   <2014年上半期の軽自動車車名別販売台数> 1.ダイハツ タント 135,688台 2.日産 デイズ 98,789台 3.ホンダ N-BOX 96,478台 4.スズキ ワゴンR 93,761台 5.ホンダ N-WGN 87,442台 6.ダイハツ ムーヴ 82,252台 7.ダイハツ ミラ 79,258台 8.スズキ スペーシア 66,697台 9.スズキ アルト 58,040台 10.スズキ ハスラー 40,291台   スズキ ハスラーの健闘、ホンダ N-BOXの勢い低下以上に目立つのが、日産 デイズの躍進でしょう。   それまで軽自動車から距離を置いていた日産が、三菱自動車と共同開発した本格的軽が、ライバル相手にガチンコ勝負をしています。さぞかし販売現場は意気軒高だろう・・・と思うのですが、この数字にはトリックがあります。   車名別販売台数は、同じ車名を採用した派生車種も合算してしまいます。例えば、トヨタ プリウスにはワゴンタイプのプリウスαが、ホンダ N-BOXもN-BOX+が、有名なところでは、トヨタ カローラにはアクシオ(セダン)、フィールダー(ワゴン)、ルミオン(ハッチバック)が合算されています。つまり、厳密にはモデル別ランキングとしてはあまり適切ではない、ということです。   日産 デイズには、スーパーハイトワゴンのデイズルークスが含まれています。一方、ダイハツ はムーヴとタントというように、ハイトワゴンとスーパーハイトワゴンは別の車名なので別々にカウントされています。   では、デイズのように、ハイトワゴンとスーパーハイトワゴンを合算してラインキングを作り直してみましょう。   1.ダイハツ タント+ムーヴ 217,940台 2.ホンダ N-BOX+N-WGN 183,920台 3.スズキ スペーシア+ワゴンR 160,458台 4.日産 デイズ+デイズルークス 98,789台 5.ダイハツ ミラ 79,258台 6.スズキ アルト 58,040台 7.スズキ ハスラー 40,291台   ご覧のとおり、日産の軽自動車はまだ御三家(スズキ、ダイハツ、ホンダ)の牙城には遠く及ばないことがわかります。   それでも、こうしたランキングは「日産、新型軽好調!」といったニュースとともに、店内のチラシやメディアをにぎわすことになるでしょう。かつて全く軽自動車を扱っていなかった頃から比べれば確かに驚異的な販売台数だとは思いますが、こうしたトリックを踏まえた上での適切な報道がメディアには求められると思います。   <追伸> さて、上記ランキングを見てもう1つ指摘したいのは、実施的にはデイズと同じ車であるはずの、三菱 ek がランキング未登場なこと。6月は4,760台で11位でした。1-6月の累計台数は33,701台と、デイズの約1/3に留まっています。   この状況を見てか、日産のゴーン社長は今年の株主総会の場で、将来的には自社工場での軽自動車生産を示しました。(現在は三菱自動車に生産委託の形をとっています) リストラ効果により、過去最高益を達成した三菱自動車としては、心中穏やかではない状況かもしれませんね。

Koji Yamanaka

6月の新車販売実績

2014年7月4日 公開 自動車業界トピックス 
今日は日本自動車販売協会連合会(自販連)、及び日本自動車輸入組合(JAIA)から6月の新車登録実績が発表されていました。   自販連:http://www.jada.or.jp/contents/data/hanbai/brand02.htm/ JAIA:http://www.jaia-jp.org/j/stat/nc/   <主なトピックス> ・乗用車(普通車+小型車+軽乗用)は379,242台で前年比100.1% →ほぼ前年なみで、消費税増税の影響は関係ないみたいです。 ・軽乗用に限ってみれば前年比103.2%と、前年以上に売れています。 ・輸入車(逆輸入車除く)については前年比84.0%と少々苦戦模様 →VW、メルセデス、BMWというトップ御三家が揃って前年割れが影響 →輸入ブランドの中でも伸びているのが、Audi(A3セダン)、Jeep(新型チェロキー)といった新型車が好調なところ。   6月は4半期の締めの月にあたるため、各社様々なキャンペーン、スペシャルオファーを仕掛けたり、特別仕様車を発表したり等でマーケットを盛り上げていました。7月からは期が変わるところが多いのでまた新しい施策や商品が色々発表されることでしょう。楽しみです。  

Y.Hamakawa

ルマン24時間

2014年6月17日 公開 自動車業界トピックス 
ルマン24時間 WEB・エンジニアリングの話題を取り上げると言っておきながら、いきなり自動車関連です。だれも取り上げないので。 巷ではサッカーワールドカップの話題で持ち切りですが、ルマン24時間が終わったようですね。以前は地上波でも中継されていたと記憶しているのですが、もうしていないようです。モータースポーツも盛り上って言ってほしい物です。会社的に。 私はそんなには自動車業界に詳しくないので知らなかったのですが、ルマンの上位チームはすべてハイブリットカーだそうです。モータースポーツでもハイブリットなのですね。時代を感じます。ハイブリットカーと聞くとトヨタの代名詞だと思っていたのですが、優勝したAudiもハイブリットみたいですね。 にしてもトヨタ惜しかったですね。日本メーカーが優勝したのはロータリーエンジンのマツダが過去一回のみ。ロータリーエンジンってもう出場できないのでしょうか? トヨタが優勝すれば、ニュースになり、またモータースポーツも盛り上がって欲しいと思います

M.K

フォード・フォーカスという車

2014年6月10日 公開 自動車業界トピックス 
最新モデルとなる3世代目のフォード・フォーカスに試乗する機会に恵まれました。世界120ヶ国以上で販売されており、2012年1-9月では単一車種として世界No.1の販売台数を記録したにもかかわらず、日本では今一つ認知が低いこのモデル。実際このクラスは、VWゴルフ、メルセデスベンツAクラス、ボルボV40など実力、人気ともに優れた競合車が多いのも事実ですが、フォーカスもクルマとしての高い基本性能を持っています。   FOCUS_01   当日は都内から横浜までの往復でしたが、あちこちで洪水警報が出るほどの大雨でした。しかしながらフォーカスは水たまりが多い首都高速や横風が強い横浜ベイブリッジも安定して走ってくれました。そしてなんといってもフォーカスの素晴らしい点はハンドリングの良さです。初代モデルから続く切った時のフィーリングの良さは、何処までもずっと運転していたいと思わせるほどです。重くもなく、軽くもなく、切った分だけ確実に車体が曲がるような感覚が運転者を感動させるのでしょう。   もし機会があれば皆様もぜひフォード・フォーカスをお試し下さい。

Hamakawa

CarPlayは成功するか?

AppleのCarPlay、発表からかなり日が経ちますが、なかなか現実味を帯びてきませんね。 毎年行われるAppleの開発者向けの祭典、WWDCのタイミングで新しい映像が流れました。   手持ちのiPhoneをケーブルに繋ぐと、ダッシュボードモニタ上に「運転に最適なiOSが動作する」というコンセプトのようです。音声認識のSiriを主軸に、様々なアプリケーションを利用できるように思えますが、皆さんはどう思われますか?私は・・・iPhoneをそのままダッシュボードマウントして使えば良いのでは?と思ってしまいました。このビデオを見る限りでは、残念ながらCarPlayならではと思えるシーンは見当たりません。   もう一つ不可解なのは、Appleにしては珍しく、ハードウェアの提供を各自動車メーカー(或いはカーナビ製造メーカー)に委ねている部分です。Appleは秀逸なOSとセットで魅力的なハードウェアを生み出す会社です。この戦略がCarPlayにはありません。映像は高級スポーツカーであるフェラーリのCarPlayデモですが、チューニング不足なのか、まるで初期のAndroidのようなタッチレスポンスの悪さです。   CarPlayのコンセプトは素晴らしい。スマートフォンの魅力的なサービスを、運転中でも利用出来たらどんなに便利な事でしょう!でもその基盤作りはそう容易いものではなさそうです。

Haruta

Alfa Romeo 4C 発表会

2014年5月27日 公開 自動車業界トピックス 
  サーキットにおける輝かしい歴史と、イタリアニティ溢れる官能的なデザインが特徴のアルファ ロメオブランドから、待望の本格的スポーティモデル「Alfa Romeo 4C(フォーシー)」が発表されました。メディア関係者、販売店代表者、VIP顧客を招待しての発表イベントが、東京国際フォーラムで開催されたので行ってきました。   4C02   軽量化をねらったカーボンファイバー製のモノコックボディに、最高出力240psを発揮する1,750cc直噴ターボエンジンをミッドシップレイアウトするこの後輪駆動モデルは、ハイブリッドエンジンを搭載したエコカーが幅を利かす現在において、純粋に「運転」を楽しめそうな数少ないクルマといえるでしょう。2014年7月1日(火)より、全国のアルファ ロメオディーラーにて発売予定。   4C01   詳しくはアルファ ロメオブランドサイトへ http://www.alfaromeo-jp.com/4c/

Hamakawa

 

「オススメ自動車Webメディア」

2014年5月26日 公開 自動車業界トピックス 
はじめまして。InspirationのYamanakaです。   私からは自動車に関連した様々な話題を発信していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。   さて、第一回の今回は、私も日頃よく拝見している自動車Webメディアを、独断と偏見の元にご紹介したいと思います。   かつては自動車雑誌(紙媒体)のWeb版が主流だった自動車Webメディアも、無料提供故の紙誌面との差別化や、有償サービス化の失敗、大手ブランドの参入と挫折など、業界的な悲喜こもごもを経て安定期に入っているように見受けられます。自動車オンリー、というのは実は最近は成立が難しいのか、それぞれ独特のポジションで生き残ってきている、そんな印象を受けます。それ故にどのサイトも特徴がありますから、自動車業界の方も、ユーザーの方も様々な視点で楽しむことができると思います。   自動車ディーラーの営業マンの方は、セールス時の話題のネタ集めに。   自動車好きの方は仲間との会話で使う蘊蓄ネタに。   マーケティング業界の方は、今後の自動車関連ビジネスの方向性を探る材料集めに。   これからご紹介する5つのサイトが少しでもそのお役に立てれば(?)幸いです。     1.Responce http://response.jp/   元々はアスキーが運営していた総合自動車ニュースサイトだった「オートアスキー」が、運営元の移管を経て2003年にサイト名を「Response」に変更しました。それまで自動車関連サイトでは試乗記などの読み物が主で、メーカーなどが発信するニュースリリースなどは副という位置づけでしたが、オートアスキーはそれを逆にとり、とにかく幅広く多くの自動車関連ニュースを集めたサイトとして、広く認知を集めたように記憶しています。 その後、読み物系コンテンツが増えてきて個人的にはノイズが増えたなぁというのが正直な印象なのですが、今や他のWebサイトにもニュース情報を提供するなど、自動車関連ニュースの総元締め的なポジションは不動な感じです。 現在は対象を鉄道や船舶など、複数に広げており、自動車好きは乗り物好きということで、知っておいて損は無い話題の宝庫です。   01response     2.Car Watch http://car.watch.impress.co.jp/   パソコン、携帯、デジカメなどのAV機器や家電に関する情報発信を強みとする「Impress Watch」社が提供する、Web情報マガジン「Impress Watch」の自動車関連サイトです。 こちらも主:ニュース、副:読み物というスタイルをとっていますが、先にご紹介したResponseが元々自動車関連メディアからスタートしたのに対し、Car Watchは情報・AV機器関連メディアの派生という位置づけです。 Responseよりも取り扱う範囲は狭いのですが、短時間で自動車業界の動向をさっと把握しておきたい、と言うときには便利かもしれません。Responseよりも掲載される画像が多いことと、サイトの見やすさ、読みやすさにおいても、Car Watchの方が優れている点がさらにその傾向に拍車をかけていると思います。   02     3.Cliccar http://clicccar.com/   自動車関連書籍では業界No.1の三栄書房が運営する自動車ニュースサイトです。 単なるリリースをそのまま掲載するのではなく、編集部が独自の視点で記事化して発信している「半読み物」コンテンツが最大の特徴です。 時々自社書籍のアピール記事が出ますが、個人的にはいち早く掲載される海外の面白動画紹介に注目しています。 コーヒー片手に気軽な気持ちで楽しめるニュースサイト、といったところでしょうか。   03   ※Cliccarの米国版的なサイトが「autoblog」(http://jp.autoblog.com/)。 どちらが先かはわかりませんが、こちらも自動車関連の話題を楽しく気軽に読むことが できると思います。     4.AUTOCAR DIGITAL http://www.autocar.jp/   輸入車や海外での日本車の評判などを知りたいときにオススメなサイトです。 欧州で非常にメジャーな自動車雑誌「AUTOCAR」の日本語版Webサイトという位置づけで、日本未導入のモデルに関する情報を集めたり、日本車に対して現地メディアがどのような評価を下しているのかを直に把握することができます。 欧州の自動車メディアの評価視点は、道路事情やモノに対する価値観がそうであるように、日本とは大きく異なる部分があります。 例えば日本で車を買うときはオプションはあくまでも「無くても困らない」ものが設定されますが、欧州ではトランスミッションやエアコンまでもオプションリストに載っていたりします。そうした異なる価値観で評価された記事というのは、自動車という製品を理解し、それを他人に説明する上でとても役に立ちます。   04     5.日経ビジネス「フェルディナンド・ヤマグチの走りながら考える」 http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090512/194452/?n_cid=nbpnbo_leaf_kbn   経済誌「日経ビジネス」のWeb版の中にある特集です。見た目はすごーく怪しい変な著者ですが、凄く真面目にふざけた記事を連載しています。 各記事冒頭のヨタ話はひとまず置いておいて、その後に続く自動車試乗記、開発者インタビュー、オーナー直撃インタビューという構成が、よくある自動車雑誌には無い新しい発見を与えてくれます。 経済誌故に、良くも悪くも自動車評論家っぽくない視点というか、「すれてない」感じが個人的には気にいっています。 また、工場やメーカー、開発者たちの想い、こだわりなども伝わってくるので、これを読んだ後に同じ車に接すると、また違った感慨にふけることができます。 普通の試乗記は単なるメーカーのプレスキットの焼き直しでつまらない、という方にオススメです。   05     さて、自動車に限った話ではないですが、一つの工業製品(サービスも)に対し、「作る人」「売る人」「買う人」の視点は不思議と交わりません。例えば売る側は「少しでも高く売りたい」、買う側は「少しでも安く買いたい」というように、そもそもお互いの立場は究極的には相いれません。そうしたズレは時として摩擦を生みますが、ズレているからこそ画一的でない価値感が存在し、新しい発見と感動が生まれていると思います。   特に自動車業界というのは、その傾向が強いまま巨大で普遍的なマーケットにまで成長した不思議なところだなぁといつも感じています。   Inspirationという会社は、恥ずかしながらそのズレを少し調整して、「売る人」と「買う人」を繋げる(=摩擦を減らす)お手伝いをしているところです。   少しでも自動車を手に入れることの悦びと発見のお手伝いが今後もできれば、と考えています。    

Koji Yamanaka(初代 MINI Convertible Cooper Sに乗りながら)

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