たかがシェア。されどシェア。
2015年7月16日 公開
自動車業界トピックス
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さて、ではシェアというのはとにかく大きな数字であればそれでいいのでしょうか。 2015年1-6月の輸入車販売台数ランキングを見てみましょう。 ついにフォルクスワーゲンを抑えて上半期一位を獲得したメルセデスベンツの、「輸入車市場」におけるシェアは22.7%です。さらにBMWまでの上位3ブランドのシェアは59%、BMW MINIまでを含むドイツ系5ブランドの同シェアは、実に77.1%にもなります。 これらの数字になにか意味を持たせることができるでしょうか? ここで登場するのが、アメリカの数学者、B.O.クープマンによって導き出された市場シェア理論です。 これによると、シェアには6つの意味のある目標値が存在するそうです。- 独占的市場シェア:73.9%
「独占的寡占型」と呼ばれ、首位が絶対安全かつ優位独占の状態となる
- 安定的トップシェア:41.7%
実質的に3社以上の争いの場合、41.7%以上のシェアを取れば業界における強者となり、安定した地位を確保できる
- 市場影響シェア:26.1%
この値を上回ると、激戦の競争状況から一歩抜け出した状態となる。市場における優劣を決める境界線。少数による寡占状態ではない市場では、一般にはこのレベルが業界トップであることが多く、シェア2位であったとしても、市場に影響力をもつことが可能となる
- 並列的競争シェア:19.3%
複数企業で拮抗している競争状態の時に多いシェアで、安定的トップの地位をどの企業も得られていない状況。この場合は、市場影響シェアである26.1%を獲得することが各企業の目標となる
- 市場認知シェア:10.9%
生活者において純粋想起がなされるレベルのシェア。そのブランドや商品に対する認知がその市場で認められたともいえる
- 市場存在シェア:6.8%
生活者において、助成想起が可能なレベルです。市場において、かろうじて存在が許されるレベル
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と、ここで終わってしまうかといえばさに非ず。もう少し俯瞰する位置に視点を動かしてみましょう。 そう、輸入車はそれだけで完結する市場ではありません。日本では国産車とも競合しています。 輸入車が日本の新車市場におけるシェアは、なんとたったの6.4%。商用車を含めた場合は5.4%。軽を除いても10%ほどの数値にしかなりません。 これはクープマンの理論に当てはめると、ようやく市場に認知されるか、ギリギリ存在が許される程度のものでしかない、と言えます。 輸入車の各ブランドは、「輸入車市場」という非常に小さい枠の中で自身の立ち位置を見極め、目標を決めるだけでなく、「日本の新車市場」の中でも同様の戦略を立てていかなくてはなりません。 フォルクスワーゲンが軽自動車よりも価格の安い「up!」を販売したり、メルセデスベンツが低価格の「Aクラス」を販売したり、BMWがFFのミニバンの「グランツアラー」を販売する。 シェアのお話を知る前と知った後でこうしたトピックに触れると、インポーターの思惑や苦悩の一部が少し見えてくる気がしませんか? 数字から始まる推理ゲーム。面白いでしょ?Koji Yamanaka