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Koji Yamanaka
9月の拡販月が過ぎ、COTYノミネート車が発表されると、自動車販売業界は(東京モーターショーが無い年なら)ひとまず落ち着きを見せる10月ですが、今年はちょっと違います。   輸入車の販売(登録)台数ランキングは、エコカー減税への対応に力を入れ、高い商品力で業界をリードしてきたVolkswagen(以降VW)のダントツ一位というのがここ数年の傾向でしたが・・・   まず、今年1月から9月までの新車登録台数の推移をまとめたグラフをご覧ください。(数値出展:以降全てJAIA)   01     3月までの消費税増税前の駆け込みと、翌4月の落ち込み。そして6月ボーナス商戦での回復。ここまでは各ブランドとも同じような軌跡を描いています。唯一目につくのは、4月のAudiとBMWとの順位逆転でしょうか。   ところが各ブランドが販売を落としている7月に、Mercedes-Benz(以降MB)は影響を軽微に留めています。さらに8月は販売台数を伸ばし、ついに単月でVWを抜いてTOPに躍り出ました。その傾向は先月9月も続いています。   新型Cクラス導入の効果であることは疑いようがありませんね。ただ、MBの好調さだけが順位変動の要因ではない印象を受けました。8月から2位に転落した、VWの販売台数が思ったほど伸びていないのです。昨年COTYを受賞したGolfの勢いを受け継ぐはずのGolf Variantや、The Beetle/Polo/up!といった他の量販モデルの伸び悩みがあるようです。   こうした傾向をわかりやすくする為、2013/4-2014/3、2014/4-9、2014/1-9の各累計値をグラフ化してみました。   03   2013年度の累計では1位VWと2位MBとの間には十分な差がついています。ところが、1-9月累計でその差は縮まり、4-9月累計ではかなり近い数値になってしまっています。   3位以下の各ブランド間の差と比べても、VWの減速が大きいことが見てとれます。Aクラス、GLAクラス、Sクラス、Cクラスと立て続けに革新的かつアグレッシブな新型モデルを切れ目なく投入してきたMB、同様に新型車種を立て続けに投入して車種レンジを広げつつあるBMWに対し、市場へのブランニューモデル投入がほとんどなかったVW(とAudi)が苦戦していることが数値から透けて見えてこないでしょうか。   それは、グループとしての登録台数に注目してみるとよくわかります。     02   主に小型車を得意とするVW+中大型車を得意とするAudiの両ブランドですが、MBとsmartのグループに激しく追い立てられています。VWからはAやGLAクラスへと、AudiからはCやSクラスへと顧客が流れているのかもしれません。   一方、このグラフで注目したいのはBMWとMINIのグループ。BMW単体では今年は3位が定位置となっていますが、小型車を取り扱うMINIと組み合わせることで、同様の車種ラインナップとなるMBとほぼ同等の数字を出していることがわかります。   同じように、累計台数でも比較してみましょう。   04     ここでもやはり、VW+Audiグループの落ち込みと、BMW+MINIグループの奮闘が見てとれます。もしMBグループがさらに台数を伸ばすとすれば、現在ほとんど数字に寄与していないsmartブランドのテコ入れが必要になるかもしれません。   今年はVWでは電気自動車の導入がこの先予定されていますが、全体の数を大きく伸ばす要因にはなりにくいタイプの車種です。となると、9月にデビューしたPoloに期待したいところですが、先代からほとんどデザインが変わっていないため、消費者へのアピール力に欠ける印象です。   もし現在の勢いがこのまま持続するとなると、1-12月累計でついにVWの連続TOPの記録がストップするのでは、と個人的には注目しています。   —————————–   さて、同様の傾向を今度は年単位で見てみることにしましょう。2014年のみは1-9月の累計値ですので、他の年よりも大きく下がっていることにご注意ください。   05   ここからは箇条書きでポイントを紹介していきましょう。   ・2009年の大幅な落ち込みはリーマンショックによるものですが、その中で台数を伸ばしてきたAudiは異質とも言えます。   ・MINIの登場がPeugeotの長期低迷を、Audiの成長がVolvoの低迷につながっていることがこのグラフからは推測されます。   ・ただし、Volvoは商品力の強化でリーマンショック後立ち直りを見せています。   ・MBとBMWは2004-2012年の間で激しい2位争いを繰り広げてきました。これはMINIの成長時期を追うように重なることから、MINIの顧客をうまく店舗併設しているBMWが取り込んでいる、という見方もできるかもしれません。こうした相乗効果をもっと他のブランドもうまく活用すれば、と思わずにはいられません。   今度はグループ単位で比較してみます。   06   ・Audiの成長を上乗せすることで、1位を盤石にしてきたVWグループ。   ・MINIの登場で2位へと躍進したBMWグループ。   ・smartが足をひっぱるMBグループ。   ・商品力の差から市場での存在感を落としているPeugeotグループ。   すでに隙間なくラインナップを揃えてきた輸入車ブランド。革新的だったりデザイン的に優れた新型車が出れば再び順位が変動する可能性がありますが、個人的に期待したいのは商用車の導入です。   VWは高級車のフェートンの導入を諦めたため、高額な商用車の導入はまずしない、と思いますが、もし実現すれば市場に面白い変化が起きるのでは、と期待しています。例えばルノーカングーのクラスからラインナップし、商用車としてだけでなく、MPVやミニバン、あるいはキャンピングカーとしての用途にも向いた車両を揃え、乗用車登録可能とすることで、新たな需要を掘りおこせるのではないかと考えるからです。   ただし、欧州の商用車はいずれも車幅がかなり広いことから、首都圏などの大都市部ではそれほど期待はできないかもしれません。   とはいえ、同様の車種はMBも広くラインナップしており、もし導入が実現すれば、日本市場における(国産車に対する)シェアがさらに伸びるのでは、と思っています。   一方、BMWは商用車をもたないことから、さらなる成長のため、車種ラインナップの拡充に走っているのかもしれません。最近の偶数シリーズへの分離と様々なモデルタイプの投入、そしてFF車の発売と、なりふり構わぬ展開を見せています。   果たして2014年は輸入車市場にとってどんな年になるのか。これから先の3ヶ月&半年が楽しみです。  

Koji Yamanaka